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2022.05.24

社外取締役の業務執行について整理して解説【改正会社法】


改正会社法:社外取締役の業務執行について

前回の記事で紹介した社外取締役の要件は、2021年3月施工になった改正会社法により定められた要件になっています。

この改正の一部により、一定の要件のもとでは社外取締役が業務執行をしても社外性を失わないこととされました。

改正前の会社法下では、社外取締役が業務執行に関わった場合、要件イで定められる「業務執行取締役該株式会社の業務を執行したその他の取締役」に該当することになり、社外性を失ってしまうことになっていました。

しかし、今回の改正により「業務の執行の社外取締役への委託」という項目が追加されました。

具体的に、新法第348条の2に定められています。

第三百四十八条の二 

株式会社(指名委員会等設置会社を除く。)が社外取締役を置いている場合において、当該株式会社と取締役との利益が相反する状況にあるとき、その他取締役が当該株式会社の業務を執行することにより株主の利益を損なうおそれがあるときは、当該株式会社は、その都度、取締役の決定(取締役会設置会社にあっては、取締役会の決議)によって、当該株式会社の業務を執行することを社外取締役に委託することができる。

2 指名委員会等設置会社と執行役との利益が相反する状況にあるとき、その他執行役が指名委員会等設置会社の業務を執行することにより株主の利益を損なうおそれがあるときは、当該指名委員会等設置会社は、その都度、取締役会の決議によって、当該指名委員会等設置会社の業務を執行することを社外取締役に委託することができる。

3 前二項の規定により委託された業務の執行は、第二条第十五号イに規定する株式会社の業務の執行に該当しないものとする。ただし、社外取締役が業務執行取締役(指名委員会等設置会社にあっては、執行役)の指揮命令により当該委託された業務を執行したときは、この限りでない。

参照:e-gov 法令検索 https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=417AC0000000086

これらをまとめると、

ⅰ. 会社と取締役の利益が相反する状況にあるとき
ⅱ. その他取締役が会社の業務執行をすることにより株主の利益を損なうおそれがあるとき

には取締役の決定により、当該会社の業務執行を社外取締役に委託することができ、これらは第2条15号における要件イで定められた「業務執行」には該当しないということです。

会社または株主と取締役の利益が相反する状況とは

上記の条件で定める利益相反の状況として想定しているのは、例えばMBOです。MBOとはManagement Buyout」の略称で、経営陣が参加する企業買収のことを言います。例えば子会社や一事業部門を切り離す際に第三者に売却せず経営陣がその株式を取得し会社から独立することや、上場会社の株式非公開化のために用いられます。

以上のMBOにおける状況を図示すると以下のようになります。

こういったMBOを行う際、企業価値の向上により株主の利益を代表すべき取締役が、株主から対象会社の株式を取得することとなり利益相反が生じると考えられます。買収対象の株式会社の取締役が一般の株主から株式を買い取るため、買取価格を低価格にしようというインセンティブが働きます。

このとき、社外取締役はできるだけ高く売りたい株主と、できるだけ安く買い取りたいMBO参画取締役との利益相反に対して、中立な立場から業務を執行することが期待され、この執行に関しては、第2条15号の要件イの定める「業務執行」には該当しないことになります。