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2022.08.05

社外取締役の役割とは?取締役会モデルから考える取締役会と社外取締役の役割


 昨年の会社法改正による社外取締役登用の義務化をはじめ、現在のコーポレートガバナンスや社外取締役を取り巻く環境は大きく変化しています。このように社外取締役の登用を促す動きが盛んであるものの、社外取締役がどういった役割を期待されているのかについてはあまり明らかになっていないのではないでしょうか。近年では、元官僚の方から弁護士、公認会計士はもちろん、女子アナといった様々な経歴を持った人が社外取締役に就任しており、社外取締役の持つ資質も様々であると考えられます。

 そこで、今回は社外取締役の役割について、そもそも取締役会とはどういった場なのかを取締役会モデルを通じて確認し、そこでの社外取締役の役割について考えていきたいと思います。

取締役会とは

 取締役会モデルについて考える前に、まずは取締役会の定義について確認したいと思います。取締役会は会社法362条2項及び3項において、

2 取締役会は、次に掲げる職務を行う。
  一 取締役会設置会社の業務執行の決定
  二 取締役の職務の執行の監督
  三 代表取締役の選定及び解職

3 取締役会は、取締役の中から代表取締役を選定しなければならない。

と定められています。

つまり、簡単に言えば、取締役会には業務執行(執行)、執行監督(監督)、代表取締役の選定(指名)の3つの役割があると考えられます。

取締役会モデルとは

 取締役会の役割を確認した次は、取締役会モデルについて見ていきます。取締役会モデルとは、取締役会における執行、監督、指名のどこに重点をおき、どのような人員構成をするかによって、大きく分けて以下の3つに大別できると言われています。

   ①マネジメント・ボード
   ②アドバイザリー・ボード
   ③モニタリング・ボード

①と ② を区別せずにマネジメントモデルとくくり、マネジメント・モデルとモニタリングモデルとの分け方をする場合も多いですが、今回はこの3つに分けて解説していきます。

1. マネジメント・ボード

 マネジメント・ボードでは、経営の意思決定、つまり執行が最重要視されています。

 執行についての事項を話し合うため、構成としてはおのずと内部事情をよく知る社内取締役が中心に構成され、社外取締役が設置されることはあまりないケースであるということになります。

 従来の日本企業の取締役会は社内取締役のみで構成されていることが多かったため、このモデルが採用され続けてきたと考えられています。ただし、勤務実態を伴わない社外取締役や、何も期待せずに上場要件を満たすためだけに社外取締役を登用する企業がある場合、依然としてこのモデルを採用していると考えられます。

2. アドバイザリー・ボード

 アドバイザリー・ボードでは、経営の意思決定を重視しつつも、その際に経営陣への助言を取り入れることも同様に重視しています。とはいえ、助言は経営の意思決定のためのツールといった立ち位置とも捉えられるため、やはり執行が最重要視されていると言えます。

 助言を取り入れつつ執行について話し合うため、構成としてはやはり社内取締役が中心になるものの、少数ではありながらも社外取締役が混じることとなります。

 ここ10年弱のガバナンス改革を通じ、社外取締役を取り入れる方向へと進められてきましたが、依然として社内取締役が優位の構成が続いているため、現在の多くの日本企業の取締役会はこのモデルを採用していると考えられます。(JPXの調査によれば、2021年8月時点において独立社外取締役が過半数の企業は市場第一部の7.7%に留まっています。)

3. モニタリング・ボード

 モニタリング・ボードでは、経営陣の監督が最重要視されます。多くの場合は、取締役会の3つの役割である執行、監督、指名を機関設計により上手く分離し、監督機能のみを取締役会に残すという形によって実現されます。

 監督が最重要視されている以上、構成は社外取締役が中心になります。仮に執行と監督を同じ人が行えば本当に適切な監督を行えるのかといった疑問が生じるため、社内取締役は必要最低限になります。

 JPXの調査における、社外取締役が過半数を超える企業はこのモデルを志向していると考えられます。また日本企業ではなく、米国企業のほとんどがこのモデルを取り入れていると考えられます。(NYSE, NASDAQの上場規則では、社外取締役の数が過半数であることが定められています。)

モデルから考える社外取締役の役割とは

 これまで見てきたように、取締役会は基本的に執行、監督、指名を中心とした経営の重要事項を決定する機関です。しかしながらその在り方には複数の種類があり、その最重要視事項によってメンバー構成が変わってきます。当然ながら、それに応じて社外取締役に期待される役割も大きく変わることとなります。会社の設計に応じて柔軟な活躍の仕方があるため、採用する側、される側双方がそれぞれの役割を認識することが重要な一歩になるのではないかと考えます。