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2022.08.05
社外取締役の役割とは?取締役会モデルから考える取締役会と社外取締役の役割
昨年の会社法改正による社外取締役登用の義務化をはじめ、現在...続きを読む
以前の記事では取締役会モデルと社外取締役の役割について確認し、取締役会の在り方には複数の種類があり、執行、監督、指名のなかから最重要視する事項によってメンバー構成、そして社外取締役の役割も変わってくる、と紹介しました。
今回は、それぞれの取締役会モデルに応じた、理想的な機関設計についてまとめていきます。
まずは前回の記事で、取締役会モデルについてまとめた表を再掲します。
こちらを踏まえたうえで、次に機関設計についてそれぞれ確認していきます。
会社法は公開会社及び大会社に対して、株主の権利を守るため機関設計に関して、以下のことを要求しています。
1. 取締役会を必ず置く
2. 会計監査人(監査法人)を必ず置く
3. 以下の3つの制度(機関設計)のいずれかを採用する
・監査役会設置会社
・指名委員会等設置会社
・監査等委員会設置会社
今回は、この3つの機関設計について取締役会モデルとの関連性を見るため、簡易的に会社の中枢の機能を執行、監督(及び監査)、指名に分けて、これら機関設計の違いを簡単に確認していきます。
監査役会はすべての監査役で組織され(会社法第390条)、取締役の職務執行を監査する機関です。
(会社法381条1項)。
監査役は、取締役(会計参与設置会社にあっては、取締役及び会計参与)の職務の執行を監査する。
なお、監査の目的は法令定款違反行為の抑止にあるため、適法性の観点からの監査が中心となります(適法性監査)。なお、監査役の権限・責任の範囲(適法性監査・妥当性監査)に関するより詳しい内容についてはこちらをご参照ください。
監査役会設置会社の機関設計を選んだ場合、
執行:取締役
監督:取締役
(監査:監査役)
指名:取締役
が担うこととなります。
このとき、指名も執行も監督も取締役が行うこととなるため、意思決定のスピードを期待することはできますが、ガバナンスの観点からはあまり好ましい機関設計とは言えません。仮に執行する機関が上手くいかなかったとしても、それを監督する機関、その結果を踏まえて人事指名する機関がほとんど同じであるため、相当自律的な組織でない限りは効果的なガバナンスを期待することは難しいと考えられます。
指名委員会は、監査委員会、報酬委員会とともに取締役会の中に機関として設置されています。指名委員会は取締役の選任・解任に関する議案、報酬委員会は執行役及び取締役の報酬内容の決定、そして監査委員会は取締役及び執行役の職務執行を監査します。(会社法404条1項 – 3項)
なお、各委員会は取締役3人以上の委員で組織され、それぞれその過半数が社外取締役である必要があります。(会社法400条3項)
さらに、この機関設計に特徴的なこととして、一定の会社の基本事項を除いた重要な業務執行の決定を取締役会から執行役に委任することが認められていることが挙げられます。
指名委員会等設置会社の機関設計を選んだ場合、
執行:執行役
監督(監査):取締役(監査委員会)
指名:指名委員会
が担うことになります。
これにより執行と監督が明確に分離され、執行に対する監督の有効性が高く期待されます。さらに、指名機関である指名委員会の過半数が社外取締役であるため、執行に対する監督の結果がより反映されやすく、さらに効果の高いガバナンスが期待されます。また、執行が取締役会から分離されていることにより、執行に関する意思決定も迅速に行うことができるといった特徴も挙げられます。
監査等委員会は、取締役会の中に一つの機関として設置され、組織全体として監査を担当しています。
なお、この監査等委員会は3名以上の監査等委員である取締役で組織され(会社法399の2条1項,2項)、その過半数が社外取締役である必要があります(会社法331条6項)。ですので、例えば3名の取締役が監査等委員会を務めるとした場合、そのうち少なくとも2名は社外取締役となります。
監査等委員会設置会社の機関設計を選んだ場合、
執行:取締役
監督(監査):取締役(監査等委員会)
指名:取締役
が担うことになります。
社内取締役が執行をし、主に社外取締役で構成される監査等委員会によりその監督を行うといったシステムになるため、主に上記二つ監査役会設置会社と指名委員会等設置会社の中間的な位置づけと言えるでしょう。指名機関までは社外取締役がドミナントではないものの、監査・監督機関である監査等委員会は過半数が社外取締役であることが求められているため、正しい社外取締役の選出を行えば比較的効果の高いガバナンスが期待できると考えられます。また、現在この形態は38.5%と、社外取締役を取り入れやすいことから導入を進めている企業が増加してきています。
それぞれのまとめをすると以下の表にまとめられます。
なお、2022年8月1日現在、東証プライム企業の57.6%が監査役会設置会社、38.5%が監査等委員会設置会社、3.9%が指名委員会等設置会社の機関設計を導入しています。(出典;日本取締役協会)
前回の記事で取り上げた取締役会モデルとの関連性を見ていくと、まず経営陣(社内取締役)による執行を最重要視するマネジメント・ボードを志向する会社においては、社内取締役が中心になり執行、監督、指名をスピーディーに行っていく監査役会設置会社が最も適合する機関設計と考えられます。
次に、外部からの助言を取り入れつつ、執行を重視するアドバイザリー・ボードを志向する会社においては、少数の社外取締役を採用しつつも社内取締優勢となっている監査等委員会設置会社が最も適合する機関設計であると考えられます。
最後に、経営陣による執行の監督を重視するモニタリング・ボードを志向する会社は、監督と執行の明確な分離を可能にする指名委員会等設置会社が最も適合する機関設計と考えられます。
以上を見ていくと、それぞれの企業が何を最重要視しているか、投資家にとって何が最重要となるかをどう捉えているかにより、最適な取締役会の志向及び機関設計が変わってくると考えられます。これに伴い、ガバナンスも多様なあり方があると言えるでしょう。
企業には、時代や投資家の求めることは何かについて適宜検討し、最適なガバナンスの在り方を選択していくことが求められています。