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2023.03.03

いまなぜ社外取締役が必要なのか【Vol.2】社外取締役における信頼性の担保について


JSEEDS 一般社団法人社外取締役コンソーシアムは2021年に「社外取締役の役割を最大化する」という思いで立ち上げました。同年はコーポレートガバナンス・コードの改定もあり、社外取締役の重要性はもちろん、多様性のある人材確保に企業は高い関心を示しています。前回に引き続き、「社外取締役の信頼性の担保について」JSEEDS代表理事 金子 信義が本音を語ります!

<金子 信義プロフィール>

高度な専門知識を持つスペシャリストに特化したエグゼクティブ層の人材戦略コンサルティング会社Kaneko&Associates(カネコ・アンド・アソシエイツ)を1998年に設立。米国カリフォルニア州を拠点にグローバル企業を対象としたエグゼクティブサーチを手がけ、2006年に東京オフィスを開設し、2021 年にJSEEDSを設立。前職はアメリカにて牧師をしていた異色のヘッドハンター。

社外取締役の責任とは?

コーポレートガバナンスの改定後、社外取締役への注目度が以前にも増して高まっているのは間違いないですが、高い専門性を持った方々が透明性を持って選ばれているかは、正直疑問が残ります。というのも、この時代にもあとを絶たない企業の粉飾決済、不正行為、会社私物化、産地や数値の偽装、業務上横領、不適切発言……、悲しいですが昨今の不祥事をあげ出したら切りがありません。このような報道を目にするたびに、「なぜこのような行為が平然と横行したの? 誰もチェックしなかったの?」と思うのはわたしだけではないはずです。

不祥事が起きてしまう背景にはさまざまな要因があり、社会情勢や景気動向はもちろん、会社の風土や文化に大きく関係しているものと思われます。企業の根幹である取締会の意思決定機能や経営監督が正しく機能しているかを指摘するのは、独立性社外取締役の役割でもあり、組織のシステムをいち早く指摘し、改善し、企業価値の向上に貢献することが社外取締役の責任だと思います。「とりあえず誰でもいいから(できれば女性を)数名探さないと!」なんて軽い考えで迎えるポジションではないのが社外取締役なのです。

社外取締役に必要なスキルとは?

では社外取締役に必要なスキルとは何でしょうか。

わたしが思う、社外取締役に必要な要素をいくつか挙げてみました。

●ラージスケールな経営をし、実際にハンズオンで経験を積んでいること。

●利益に基づく企業価値への追求ができること。

●会社における社会的活動をマクロな視点で考えられること。

●公共性、透明性を持ち、財務的にも意見ができること。

●随時変化する会社環境や社会のエコシステムに対応できること。

●ダイバーシティの問題、人権問題に強い関心があること。

●気候変動など地球環境問題を理解していること。

●以上すべてのことに助言と判断ができること。

いかがでしょう。「こんな人、そうそういないでしょ?」と思った方も多いのではないでしょうか。はい、その通りです、簡単に見つけることは厳しいです。華々しい経歴だけを見て“社外取締役に相応わしい人”はたくさんいらっしゃいますが、しっかりワークする人でないと意味がありません。上記に挙げた8つの要素は、わたしが25年間かけてやってきたエグゼクティブサーチで感じた、スペシャリストたちの特徴でもあります。幅広い分野に精通し、グローバルに活躍するスペシャリストたちは社会のあらゆる問題に敏感です。問題に対し、会社として、個人としてどのようにアプローチできるかを常に考え、組織をマネジメントしているのです。

「取締役の教育プログラム」というプラットホーム

さて、社外取締役の信頼性の担保にはどのような仕組みが必要でしょうか。前回でもお話しましたが、アメリカにある非営利団体NACDのような社外取締役をサポートするシステムはいかがでしょう。NACDは取締役の教育を目的とし1977 年に発足された非営利団体です。現在は1700社以上の企業の取締役や個人、合計で23,000人の会員がいるそうです。NACDの興味深いところは、公正な立場で社外取締役の認定評価システムを構築し、さらに研修や教育などの育成マニュアルがあるところ。そして運営資金は各企業がスポサードし、さまざまな組織が協力しています。

自身の経歴のほかに「NACDの教育プログラムを履修すること」が、何らかのオポチュニティになるのです。社外取締役に選任される方々はそれぞれ専門領域をお持ちで、知識や能力は高い。しかし各分野、例えば、官僚、銀行員、弁護士、会計士、大学教授……など、それぞれの背景を持つ人たちは、ビジネスの進め方は異なるはずです。「取締役の教育プログラム」というプラットホームがあれば、「社外取締役に選ばれる人」の幅も広がりますし、それは「社外取締役を選ぶ人」にとっても大きなチャンスが得られるのではないでしょうか。

経営戦略として社外取締役をしっかり選んでいるか

城西国際大学 准教授(国際人文学部 国際文化学科)吉岡美愛先生、城西国際大学院 准教授(国際アドミニストレーション) 柏木理佳先生による研究論文の一部に興味深い調査がありましたので一部をご紹介します。

社外取締役にヒアリング、アンケートを実施。「社外取締役が能力を発揮できない理由」として「複数の社外取締役の間でも意見を述べにくい関係も生まれ、社外取締役設置人数が増加したことで、経営者への影響力が増しているとは言い切れない」という回答もあった。また、日本企業へのヒアリングの結果では、「会計監査の実質的な役割は独立取締役より監査役に期待している。企業側は社外取締役には監査や監督機能よりも経営アドバイザーとしての役割を期待している」という回答が目立った。

参考資料:諸外国と比較した日本の社外取締役・監査役制度の現状と課題 P34より

株主から求められる価値向上に対し、企業は取締会がきちんと機能しているか、成果が出ているかを提示しなければなりません。経営戦略として社外取締役をしっかり選んでいるか、責任を成しているかも今後のポイントになってくるはずです。JSEEDSは新しい観点でしっかりとした「社外取締役」を選ぶお手伝いができます。ぜひお気軽にご相談ください。