COLUMN

MEDIA

2023.12.12

社外取締役の報酬と機関設計;社外取締役格差が起きている?


前回の記事では、自動車会社の社外取締役の報酬について紹介しました。
自動車会社7社で比較したとき、一人当たりの平均した社外取締役報酬額の最も多いトヨタは約5,000万円を貰っている一方で、スズキは約600万円と、8倍以上の差が開いています。

今回は、この差はどこから来ているのかについて、社外取締役に期待する役割、ひいては機関設計に注目して調べてみました。機関設計と社外取締役の関係についてはこちら、社外取締役モデルから考える社外取締役の役割についてはこちらで紹介しています。

経営への監督を期待されると報酬が上がる?

機関設計と社外取締役の関係の記事でも紹介している通り、上場企業の機関設計には

  • 監査役設置会社
  • 監査等委員会設置会社
  • 指名委員会等設置会社

の3つの選択肢があります。
詳しくは以前の記事に記述していますが、基本的に、それぞれのオプションと社外取締役への期待には以下のような関係があると考えられます。

実際に自動車会社7社の機関設計と、社外取締役をめぐる数字を見てみます。

基本的には、監査役設置会社は助言を通した企業価値向上を社外取締役に期待しているのに対し、監査等委員会設置会社、指名委員会等設置会社は監督機能を中心とした役割としている傾向が見て取れます。

さらに、少なくとも自動車会社7社で見てみると、監督機能を最も期待している指名委員会等設置会社の報酬は、監査等委員会設置会社や監査役設置会社に比べて高い傾向にありそうです。

おそらく、助言を中心に期待するときには法務などのハードスキルよりかはネットワークや経験の特殊性を買って社外取締役を雇うために報酬のばらつきが存在する一方で、監督機能を中心に期待するときにはハードスキルや経験の一般性・普遍性を買ってある種の責任をもって社外取締役を雇うため、それに応じてある程度は報酬が高めになるのではないでしょうか。

トヨタの社外取締役は特別?

とはいえ、やはりトヨタは監査役設置会社でありながら、社外取締役の報酬が特別高く見えます。
圧倒的な純利益額が大きな原因の一つではあると思いますが、

  • 社外取締役にはあくまで助言を期待するため、少数でも目的を果たせる。
  • 少数の分、固有スキル・ネットワークの特殊性を持つ人を選任できる。
  • その結果、特殊性を持った人に対して高い報酬で社外取締役を雇うことができる。

のではないかと推測できます。

なお、トヨタの2022年6月時点での社外取締役は以下の3名となっています。(他6社については記事の最後へ)

  • 菅原 郁郎(元経産省事務次官、元内閣官房参与)
    • 行政官時代に培われた地球環境問題やエネルギーに関する政策立案や組織運営の経験と知見、高い専門性と幅広いネットワークを活かし、複雑な国際情勢に対応するための指南役を果たすことで、当社の企業価値向上に寄与いただくため。
  • Sir Philip Craven(元国際パラリンピック委員会会長)
    • 国際的な組織を運営した豊富な経験や知見を活かして、様々なステークホルダーに配慮した指南役、人材育成への貢献を果たすことで、当社の企業価値向上に寄与いただくため。
  • 工藤 禎子(三井住友フィナンシャルグループ取締役執行役専務)
    • 銀行で培われた成長分野への投資判断や知見を活かし、資本の有効活用とリスク管理に配慮した指南役を果たすことで、当社の企業価値向上に寄与いただくため。

機関設計と期待する役割と報酬と

これまでの話を踏まえると、社外取締役への報酬には、
会社の機関設計と、それに応じて期待する役割とが大きく関係しそうだということが見えてきました。

今後の社外取締役への報酬を決定するプロセスにおいては開示対象ではないものの、会社は投資家の納得できる形で社外取締役を選任し、その報酬についても開示できるような意思決定をしていくことが求められるのではないでしょうか。

自動車会社の社外取締役一覧

以下、自動車会社7社の社外取締役一覧です。

トヨタ自動車(監査役設置会社)

  • 菅原 郁郎(元経産省事務次官、元内閣官房参与)
    • 行政官時代に培われた地球環境問題やエネルギーに関する政策立案や組織運営の経験と知見、高い専門性と幅広いネットワークを活かし、複雑な国際情勢に対応するための指南役を果たすことで、当社の企業価値向上に寄与いただくため。
  • Sir Philip Craven(元国際パラリンピック委員会会長)
    • 国際的な組織を運営した豊富な経験や知見を活かして、様々なステークホルダーに配慮した指南役、人材育成への貢献を果たすことで、当社の企業価値向上に寄与いただくため。
  • 工藤 禎子(三井住友フィナンシャルグループ取締役執行役専務)
    • 銀行で培われた成長分野への投資判断や知見を活かし、資本の有効活用とリスク管理に配慮した指南役を果たすことで、当社の企業価値向上に寄与いただくため。

ホンダ(指名委員会等設置会社)

  • 酒井 邦彦(元最高検察庁総務部長、弁護士)
    • 酒井氏には、当社の経営の監督機能強化に貢献いただくとともに、指名委員会および監査委員会の委員として、取締役の候補者選任プロセスの透明性・客観性強化および監査機能強化の役割を果たしていただくことを期待しております。
  • 國分 文也(丸紅 代表取締役社長)
    • 國分氏には、当社の経営の監督機能強化に貢献いただくとともに、指名委員会の委員長および報酬委員 会の委員として、取締役の候補者選任プロセスおよび取締役・執行役の報酬決定プロセスの透明性・客観性強化の役割を果たしていただくことを期待しております。
  • 小川 陽一郎(元デロイトグループCEO、公認会計士)
    • 小川氏には、当社の経営の監督機能強化に貢献いただくとともに、監査委員会の委員長および報酬委員会の委員として、監査機能強化および取締役・執行役の報酬決定プロセスの透明性・客観性強化の役割を果たしていただくことを期待しております。

日産(指名委員会等設置会社)

  • 木村 康(元石油連盟会長、ENEOS HD特別理事)
    • 日本の基幹産業における経営者としての経験によるものである。同氏は企業経営に関する豊富な経験と知見を持ち、経団連での役職のほか、石油連盟会長の経験を有している。同氏にはこれまでの経験を通じて、グローバルマネジメント、ESG、セールス/マーケティングを含めたスキル・ノウハウを踏まえて、引き続き会社に貢献することを期待している。
  • 豊田 正和(元経産審議官、元内閣官房参与、国際経済交流財団会長)
    • 経済産業審議官や内閣官房参与などの要職を歴任し、経済、国際貿易、エネルギー及び環境などの分野において豊富な経験と知見を有することによるものである。同氏にはこれまでの経験を通じて、グローバルマネジメント、政府機関、ESGを含めたスキル・ノウハウを踏まえて、引き続き会社に貢献することを期待している。
  • 井原 慶子(  慶応義塾大学大学院メディアデザイン研究科 特任教授、元国際自動車連盟Women in Motorsport評議会 アジア代表評議員ドライバーズ評議会 女性代表委員)
    • 国際的な女性レーシングドライバーとして活躍されるとともに国内外の自動車メーカーとの技術開発及び環境車普及に長年携わり、大学研究機関でのMaaS研究など自動車産業に関する豊富な経験と知見を有することによるものである。また、国際機関における組織統治及び人財育成を牽引した幅広い業務経験を有している。同氏にはこれまでの経験を通じて、グローバルマネジメント、自動車業界、ESG、デジタルトランスフォーメーションを含めたスキル・ノウハウを踏まえて、引き続き会社に貢献することを期待している。
  • 永井 素夫(元みずほ信託銀行株式会社 理事)
    • (株)みずほコーポレート銀行、みずほ信託銀行(株)等の要職を歴任し、リスク管理等の分野において豊富な経験と知見を有しているためである。同氏にはこれまでの経験を通じて、グローバルマネジメント、法務/リスクマネジメント、財務/会計、ESGを含めたスキル・ノウハウを踏まえて、引き続き会社に貢献することを期待している。
  • Bernard Delmas(元日本ミシュランタイヤ株式会社会長)
    • 自動車業界での国際的な経営経験によるものである。同氏は、研究開発や事業計画、複数部門を統括するマネジメントに関する豊富な経験と知見を有している。同氏にはこれまでの経験を通じて、グローバルマネジメント、自動車業界、製品/技術を含めたスキル・ノウハウを踏まえて、引き続き会社に貢献することを期待している。
  • Andrew House(元ソニー・インタラクティブエンタテイメント Global CEO)
    • 国際的な企業経営の経験を有し、グローバル企業での要職を通じた消費者向け製品の顧客ニーズや新しいテクノロジーについて、豊富な経験と知見を有しているためである。また、国内外での業務経験を通じた多文化的視点も持ち合わせている。同氏にはこれまでの経験を通じて、グローバルマネジメント、製品/技術、セールス/マーケティング含めたスキル・ノウハウを踏まえて、引き続き会社に貢献することを期待している。
  • Jenifer Rogers(弁護士、アシュリオンジャパン・ホールディングス合同会社 ゼネラル・カウンセル アジア)
    • 法務、コンプライアンス、リスクマネジメントに関する豊富な経験と知見によるものである。同氏は、グローバル展開を行っている日本企業における取締役、国際的な金融機関における企業内弁護士、法務責任者の業務経験を有している。同氏にはこれまでの経験を通じて、グローバルマネジメント、法務/リスクマネジメント、ESGを含めたスキル・ノウハウを踏まえて、引き続き会社に貢献することを期待している。

スズキ(監査役設置会社)

  • 堂道 秀明(元外務省、元HMIホテルグループ専務、)
    • 堂道秀明氏は、外交官としての豊富な国際経験と世界情勢に関する高い見識を有するとともに、世界規模で環境・社会等の様々な課題に取り組まれました。かかる経験及び見識に基づき、社外取締役として当社の経営に対する有益な指摘・助言及び監督をしていただいています。
  • 江草 俊(元株式会社東芝 執行役員常務)
    • 江草俊氏は、長年にわたってリチウムイオン電池の新規事業化と拡大に携わられ、電池技術に関する高度な専門的知見を有しています。また、企業の役員を務められた経験も有しています。当社がカーボンニュートラルや電動化をはじめとする様々な技術革新に対応していくうえで、かかる経験及び知見に基づき、当社の経営に対する有益な指摘・助言及び監督をしていただけると判断しました。

マツダ(監査等委員会設置会社)

  • 佐藤 潔(元東京エレクトロン株式会社 顧問)
    • 佐藤氏は、電機機器メーカーにおいて、長年にわたり海外事業を含む営業業務に従事し、営業・マーケティング領域に関する豊富な知見を有するとともに、代表取締役社長、取締役副会長などの要職を歴任し、企業経営に関する豊富な経験、識見を有しており、これらを当社の経営に活かしていただくため、社外取締役として選任しています。特に国際的視点や幅広い経営的視点からの助言・提言により、取締役会の監督機能の向上に尽力いただくことを期待しています。
  • 小川 理子(パナソニックHD参与)
    • 小川氏は、電機機器メーカーにおいて、長年にわたり音響技術開発業務に従事し、研究開発に関する高い知見を有するとともに、高級音響機器事業を担当する役員として同事業の再構築に携わるなど、企業経営に関する豊富な経験、識見を有しており、これらを当社の経営に活かしていただくため、社外取締役として選任しています。特にブランドマーケティングの視点や技術者としての専門的見地からの助言・提言により、取締役会の監督機能の向上に尽力いただくことを期待しています。
  • 坂井一郎(弁護士、元高等検察庁検事長)
    • 坂井氏は、長年にわたる検事及び弁護士としての法曹界における豊富な経験・知見を有しており、これらを当社の経営の監査・監督に活かしていただくため、監査等委員である社外取締役として選任しています。特にコンプライアンスの視点や法曹としての専門的見地からの助言・提言により、当社の経営に対する監査・監督機能強化に尽力いただくことを期待しています。
  • 北村 明良(元三井住友銀行顧問)
    • 北村氏は、金融機関において代表取締役兼専務執行役員、取締役会長(代表取締役)兼最高経営責任者などの要職を歴任し、財務及び会計に関する高い知見を有するとともに、企業の経営に関する豊富な経験、識見を有しており、これらを当社の経営の監査・監督に活かしていただくため、監査等委員である社外取締役として選任しています。特に幅広い経営的視点や財務会計の専門的見地からの助言・提言により、当社の経営に対する監査・監督機能強化に尽力いただくことを期待しています。
  • 柴崎 博子(元東京海上日動火災保険 常務執行役員)
    • 柴崎氏は、損害保険会社において、長年にわたり営業領域の業務に従事し、支社長、支店長を務めるなど、営業に関する高い知見を有するとともに、九州・沖縄エリア全域の営業を統括する常務執行役員などを歴任し、企業の経営に関する豊富な経験、識見を有しており、これらを当社の経営の監査・監督に活かしていただくため、監査等委員である社外取締役として選任しています。特にCS(顧客満足)の視点や営業の専門的見地からの助言・提言により、当社の経営に対する監査・監督機能強化に尽力いただくことを期待しています。
  • 杉森 正人(元住友商事 参事)
    • 杉森氏は、総合商社において、長年にわたり管理業務に従事し、リスクマネジメント、財務及び会計に関する高い知見を有するとともに、専務執行役員などを歴任し、企業経営に関する豊富な経験・識見を有しており、これらを当社の経営の監査・監督に活かしていただくため、監査等委員である社外取締役として選任しています。特にリスクマネジメントの視点や財務会計の専門的見地からの助言・提言により、当社の経営に対する監査・監督機能強化に尽力いただくことを期待しています。

スバル(監査役設置会社)

  • 阿部 康行(元住友商事株式会社専務)
    • 阿部康行氏は、住友商事株式会社の代表取締役専務執行役員として、監督と執行の両面から経営に携わられた経歴を有し、企業経営者としての豊富な経験と幅広い知識を備えており、IT分野における高度な知見を有しております。
  • 矢後 夏之助(元荏原製作所代表取締役社長)
    • 矢後夏之助氏は、株式会社荏原製作所において代表取締役社長、取締役会長を歴任し、企業経営者としての豊富な経験と幅広い知識を備えており、さらに、内部統制・ガバナンス分野における高度な知見を有しています。
  • 土井 美和子(元東芝研究開発センター主席技管)
    • 土井美和子氏は、株式会社東芝において情報技術分野の研究者・責任者として長年にわたる豊富な経験を有し、同分野における専門家として多数の功績を上げております。また、その高度な専門性と豊富な経験・知識から、政府の委員会委員なども歴任しております。

三菱自動車(指名委員会等設置会社)

  • 平工 奉文(元内閣府政策統括官付参事官、元製造産業局長)
    • 社外役員となること以外の方法で会社の経営に関与した経験はありませんが、経済産業省において近畿経済産業局長や製造産業局長などの要職を歴任し、また資源エネルギー庁でエネルギー政策に携わるなど、産業界全般にわたり、幅広いご経験・知見や交流を有しており、それらを活かし、取締役会議長として積極的な当社経営の監督や助言・提言が期待できるため。
  • 宮永 俊一(三菱重工業株式会社 取締役会長)
    • 世界各地で事業を展開する製造企業において企業経営に長年携わり豊富な経験と実績、高い見識を有しており、それらを活かし、積極的な当社経営の監督及び助言・提言をいただけることが期待できるため。
  • 幸田 真音(元政府税制調査会委員、元日本放送協会経営委員)
    • 社外役員となること以外の方法で会社の経営に関与した経験はありませんが、国際金融に関する高い見識に加え、作家としての深い洞察力と客観的な視点を備え、財務省や国土交通省の審議会委員を歴任された経験から豊富な見識及び経験を有しており、それらを活かし、積極的な当社経営の監督及び助言・提言をいただけることが期待できるため。
  • 竹岡 八重子(弁護士、元産業構造審議会委員)
    • 社外役員となること以外の方法で会社の経営に関与した経験はありませんが、長年の当社での監査役及び取締役としての経験に加え、弁護士として長年にわたり活躍され、法律の専門家としての豊富な専門知識と高い見識活かし、積極的な当社経営の監督及び助言・提言をいただけることが期待できるため。
  • 佐々江 賢一郎(元東京海上日動火災保険 常務執行役員)
    • 社外役員となること以外の方法で会社の経営に関与した経験はありませんが、外務省において要職を歴任し、外交官としての広範な国際感覚と豊富な見識及び経験を有しており、それらを活かし、積極的な当社経営の監督及び助言・提言をいただけることが期待できるため。
  • 坂本 秀行(日産自動車株式会社取締役、執行役副社長)
    • 世界各地で事業を展開する自動車メーカーにおける経営陣として豊富な見識及び経験を有しており、それらを活かし、積極的な当社経営の監督及び助言・提言をいただけることが期待できるため。
  • 中村 嘉彦(公認会計士、元有限責任あずさ監査法人 パートナー)
    • 社外役員となること以外の方法で会社の経営に関与した経験はありませんが、公認会計士として長年にわたり活躍され、会計監査の専門家として豊富な知識を有しており、それらを活かし、積極的な当社経営の監督及び助言・提言をいただけることが期待できることが期待できるため。
  • 田川 丈二(日産自動車株式会社 専務執行役員)
    • 世界各地で事業を展開する自動車メーカーにおける経営陣として豊富な見識及び経験を有しており、それらを活かし、積極的な当社経営の監督及び助言・提言をいただけることが期待できるため。
  • 幾島 剛彦(日産自動車株式会社 常務執行役員
    • 世界各地で事業を展開する自動車メーカーにおける豊富な見識及び経験を有しており、それらを活かし、積極的な当社経営の監督及び提言・助言をいただけることが期待できるため。
  • 垣内 威彦(三菱商事株式会社 取締役会長)
    • グローバルな取引を展開する総合商社における経営者としての豊富な経験と実績、グローバルな事業経営に関する高い見識を有しており、それらを活かし、積極的な当社経営の監督及び助言・提言をいただけることが期待できるため。
  • 三毛 兼承(株式会社三菱UFJフィナンシャル・グループ取締役執行役会長)
    • 国際的な金融機関の経営者としての豊富な経験と高い見識を有しており、その経験・見識を活かし、積極的な当社経営の監督及び助言・提言をいただけることが期待できるため。